——自分の実体験なんですね。
ナナヲ そうですね。すごくストレートに書きました。スッキリした気持ちで決別というか「さよなら」って言った曲でもあるし、ナナヲは言い逃げじゃないけど、切ないんですけど元気に。聴く人は違うかもしれないけど、ナナヲの中ではすごく前向きな曲だと思っているんです。
——「note:」とかってSNS世代の恋愛ソングだなって思います。
ナナヲ 実際、2〜3年前にSNSにどっぷりで、なおかつ恋愛してたから、必然的にそういう曲になったのかな。
——その人へのメッセージともとれるし。
ナナヲ そうですね。送りつけたいくらいですもんね。書いたよって(笑)。
——曲にするということは気持ちの整理がついたから?
ナナヲ 逆に「イエスマンイズデッド」(『DAMELEON』収録)とかは死にかけのときに書いたし、「MISFIT」もすさんでた時に書いたので、一概には言えないと思うんですけど、「note:」はめずらしく、こんなにすっきりした気持ちでかけることがあるかというくらいの……。
——最後の1ラインがね、違う人生だったかもしれないというようなことも思わせるというか。
ナナヲ そう思うこともあるけど……。
——自分のことが素直に書けるようになったとかってある?
ナナヲ すごくあります。10代のころは何も重く考えていなくて素直に書いていたんですけど、しばらくすると、自分を隠した上で、架空の人物を作って書くようなことが多かったんですけど、今は違って。もちろん今書いている曲でも、物語や題材とかもあるんですけど、「note:」と「MISFIT」はかなり等身大になったかな。
——今回、こういう恋愛のアルバムになったけど、2曲目「もしも信者」とかそうですが、歌が変わった感じがして。
ナナヲ そこに気づいていただけると、それはうれしい! ナナヲの中でも、この1年半くらいでいろんな歌が歌えるようになってきて。ボーカルレッスンは通っていたんですけど、先生が変わってすごく合ってたみたいで。歌える幅がすごく広がって、そこから歌うことが楽しくなれました。今まで自分の中でこう思ってるのに歌いこなせないみたいなことがたくさんあったんですけど、そこの差異がどんどん縮まっていることを感じていて。まだまだ埋まってはいないんですけどね。ただ、ライブでも昔のナナヲだったら「リセットセット」(『DAMELEON』収録)は歌えていなかったなと思ったし。「もしも信者」みたいなミドルテンポの優しい曲もここまで表現できなかっただろうなと思っています。曲の向き不向きとかってよくいうけど、今は、歌えない曲ってないんじゃないかなって思えてきて。その中でも「もしも信者」はすごくわかりやすいと思います。
——「チューリングラブ feat.Sou」で入った人が2曲目の「もしも信者」を聴くとハッとしそう。
ナナヲ 「違う人が歌ってるのかな?」って。今回の曲、全部違うじゃないですか。
——それぞれ表情が違いますね。
ナナヲ 結果的にそうなったというのは、今までも多分そうだったんですけど、いざ、ミックスしてマスタリングしたら、ここまで超える表現はできていなかったかなと思うんですけど。今回、それが出始めたのかなって。
——ナナヲアカリ印というのが、いろんな表情の曲の中心にあって。
ナナヲ ああ、うれしい。
——自分の声を探すのは、DECOさんの曲に引っ張られて、こういう歌い方がいいとかって?
ナナヲ 最初プリプロで自分の解釈で歌ってみて、「ここはいいけど、サビ前はもうちょっと息多めで」っていうDECOさんのリクエストにすぐ対応できるようになったのが大きいかも。前だったら、「息多めにしたら、息続かないです」みたいなこともあったけど、最近は言われたら、「こっちの声色を使えばいいんだ」とか「こっちの発声に切り替えたら、この声出るな」とかがわかるようになってきたから。自分の解釈+DECOさんのディレクションというのをどっちもできるようになったから、幅が広がったのかなって。
——曲があがってきたときどうでした?
ナナヲ この曲って、今回の『マンガみたいな恋人がほしい』でDECOさんに書き下ろしてもらうってなったときに、すごく話をしたんですよ。「じゃあ、あかりちゃんの今までの恋愛の話を全部聞きます」って。その時間を作ろうって。とにかく話す時間を設けて。恋愛話を全部聞いてもらうっていう。たまにDECOさんの話も挟むけど、一方的に話す(笑)。「こういうことがあって」「そこであかりちゃんどうしたの?」「言いたいこといいまくって、逃げましたよ!」とかって。そういう大事件をDECOさんが「ヤバイね」ってメモするんですよ。なんかもう、そうやってできたから、本当に笑っちゃうくらい自分で。曲があがってきた瞬間に「こうなったか、サイコー」みたいな。歌詞はすごく試行錯誤して、2番の歌詞とか初稿から変わってて。「もしも信者」もナナヲですね(笑)。このアルバムにはナナヲの人間像が垣間見れます。
——「note:」とか「MISFIT」だけじゃないっていう。じゃあ、煮ル果実さんが楽曲提供している「ヒステリーショッパー」は?
ナナヲ 煮ル果実さんは歌詞もサウンドも皮肉めいたものが得意だから、「ライブでかっこいい時間を作りたい」ということでオーダーもしたんですけど。
——ライブを想定して作ったんですね。
ナナヲ そうですね。この曲に関しては「ジャンプしたい!」 、縦ノリのサビで飛べるものというような。煮ルさんの楽曲って、「まっすぐこい!」っていうのとは、最も違うなって思って。承認欲求とか、SNS上で行われている偏った、歪んだ愛情の形の曲になっています。そういうものを有象無象よりも、それこそさっきの「1番になりたい」みたいなものに飢えている主人公像なので。最初はデモがあがってきたときに、言葉が多すぎて、めちゃくちゃ練習したんですけどね。もともとラストのサビも転調して結構高いんですけど、さすがに息ができませんってなって。めちゃ練習してできるようになったんですけど、ちょっと声がキンキンしちゃうから、余裕をもって半音さげたりもしています。今までにない譜割りだし、難しいんですけど、歌えるようになると3連符のところとか「気持ちいいー」ってなるんですよ。歌っていて楽しかったですね。
——最後に、完成してみてどうですか?
ナナヲ どんどん超えていけているなという実感があったかな。最初『しあわせシンドローム』作って、自分とちゃんと向き合い始めて、ツアーをまわって、『DAMELEON』を作って、めっちゃいいミニアルバムができたって思って、「次、超えられなくない?」って思っていた時期もあったんですけど、その心配は払拭された感じはありました。すごく気に入っています。
——今日、長く話していただいたことが、この作品へと、ギューっと詰まっている感じもします。
ナナヲ そうですね。ここに着地した感じはありますね。このミニアルバムの制作を通して、よりいろんなことができるんじゃないかとも思ったし、ジャケットとかも、ナナヲの肖像もそうだけど、今までとちょっと変わっていて。
——今回、『マンガみたいな恋人がほしい』というタイトルも印象的ですよね。
ナナヲ これもね、チーム内ですごく案を出して。ほかに、真面目なタイトルも考えて、競ってる案があったんですけど、より、手に取りたくなるほうって。『マンガみたいな恋人がほしい』になって。「“変”愛」をテーマに、コピーとタイトルと中身がいい意味で裏切り合っているというか。単純に少女マンガを想像して手に取った人はいやかもしれない。「全然キラキラしてないぞ」って思うかも。
——実際、『マンガみたいな恋人がほしい』ですか?
ナナヲ ほしいですよー。いろいろ登場人物っているじゃないですか。どこを指すのかっていうのはすごくあるけど。ナナヲは少年マンガとか戦うマンガが好きなので。自ずと強い人になってしまいますよね。
——ちなみに、どなたですか?
ナナヲ うわー。恋人にするならって、めちゃくちゃ妄想するんですけど。FateシリーズのZeroのギルガメッシュさまは永遠の恋人候補で、不動ですね。一番理想。王さますぎるんですけど、それでもいいって思っちゃう。最近の推しはだれだろうかな? 有名どころだと「鬼滅の刃」の天元(宇髄天元)さまですね。一番求める恋人像に近いかもしれないですね。今、そこに恋い焦がれています。『マンガみたいな恋人がほしい』って言ってますけど、ナナヲは「宇髄天元みたいな恋人がほしい」って置き換えもできる!
——そのタイトルでもよかったけども! リアルなナナヲさんの愛がわかる1枚になりましたね。
ナナヲ そうですね。リアルなナナヲの“変”愛が。
——“変”愛っていいな。
ナナヲ 変な愛の形。結構はびこっていると思うんですよね。
——恋愛してると気づいてない人もいっぱいいると思いますが。
ナナヲ まともな愛のほうが少ないんじゃないかってちょっと思いますよね。
——ネットで随分変わった感じがします。
ナナヲ すごく変わったと思います!
——悩んでいるポイントとかもね。コミュニケーションの形にも時代感も出ていて。そこに、ナナヲさん自身の成長の結晶とあゆみも詰まって。
ナナヲ そうですね。まだまだ精神面での課題はありますが、今回はすごく、いいものになったのかなと思います。
——このあとは? ちょっとは自信もつくかな?
ナナヲ つくのかなー? またライブをまわってみて、自信をもらって、また制作の時に自信をなくして、その繰り返し。その輪廻から逃れられる日は!?
——ひとつひとつ完成しても、違う欲求が生まれてそうな。
ナナヲ 届けてからも、また変わっていきますもんね。
——4月25日からはじまるツアー「週刊天使!アカリちゃんツアー」ではキャパも大きくなるし、今後どうなっていきたいですか?
ナナヲ もちろん大きいところでやって、そこで、もっとできることが増えるという風には思っているんですけど、どうなっていきたいかっていうのは、例えば「日本武道館でワンマンライブがしたいです!」とかっていうことではなくて……。「自分の役割を果たせる人間になりたい」という目的地でいうと、ネットで楽しんでいる人たちとリアルを楽しんでいるひとたちっていうボーダーがあると思うんです。ナナヲは圧倒的にネットを楽しんでいる人たちに向けて音楽をしているし、活動もしているんですけど、いつかそこの垣根をとっぱらいたくて。そこの間に流れている川を飛び越えて、両方がナナヲの音楽を聴いて、ナナヲのライブを全員が楽しめるというか、相互理解ができるといいなと。どうしてもお互いが邪険に思っているみたいなところってあって。今でこそ、いわゆるヲタクっていうひとたちが人権を得たという話はあるけど、やっぱり壁はあって。それぞれ「リア充は嫌いだ」とか「ネットばっかりしやがって」とかってあると思うんですけど、そういうのってお互いが一面しか見ていないからなんですよね。ナナヲは両方の側面を持っている人間だと思うんです。考えていることは、もちろん底辺をさまよっているんですけど、アウトプットは明るくてって両面を持っている。ネットも好きだし、ライブをするのも好き。そういう自分だから言えるのは、何かを悪いっていう人はある一面しかみていなくて、悪いって決めつけちゃってるからなんですよ。世界の全てのことにいえると思うんですけど、もっと知ればわかりあえること、気づくこともあると思うんです。そういうきっかけとして、ナナヲアカリというコンテンツが利用されるようになるといいなって。それは、必然的にライブ会場のキャパが上がっていくことだったり、聴いてくれる人が増えることにつながることだと思うのですが、それは変わらず目的です。
——それこそ、ここ数年米津玄師さんとか、ネットシーンからオーバーグラウンドで国民的に大活躍されていて、バルーン(須田景凪)さんとかEveさんとかどんどん活躍の場を広げていますが、女性アーティストも活躍している、その筆頭になってほしいなって思うのですが。
ナナヲ そうなれればいいな。でも、1番とれないからなー。コソコソと気づいたらそうなってたくらいが多分ちょうどいいかも(笑)。
リリース情報 2020年4月8日(水)発売 ナナヲアカリ ミニアルバム 「マンガみたいな恋人がほしい」 TVアニメ「理系が恋に落ちたので証明してみた。」EDテーマ 「チューリングラブ feat.Sou」収録。
完全生産限定盤 「俺、このロングTシャツを着こなせたら告白しようと思うんだ...」盤 CD+「マンガみたいな恋人がほしい」ロングTシャツ/AICL3870~3871
初回生産限定盤 「我がライブ映像に一片の悔いなし」盤 CD+BD/AICL-3872~3873/3,300円+税
通常盤 「冴えない主人公が現実にいたら普通に友達になりたい」盤 CD/AICL-3874/1,800円+税
収録内容
DISC1[CD]
1.チューリングラブ feat.Sou
作詞・作曲・編曲:ナユタセイジ ポエトリー:ナナヲアカリ
2.もしも信者
作詞・作曲:DECO*27 編曲:TeddyLoid
3.MISFIT
作詞・作曲:ナナヲアカリ 編曲:大西省吾(agehasprings)
4.ヒステリーショッパー
作詞・作曲・編曲:煮ル果実
5.note:
作詞・作曲:ナナヲアカリ 編曲:大西省吾(agehasprings)
6.逆走少女
作詞:てにをは 作曲:みきとP 編曲:emon(Tes.)
DISC2[BD]
DAMELEON RELEASE TOUR「CHANGING!」FINAL@恵比寿リキッドルーム
2019.11.27
1.人類殲滅のテーマ
2.ビビっちゃいない
3.イエスマンイズデッド
4.CHANGING! SPメドレー(メルヘル小惑星~ディスコミュ星人~事象と空想 ~眠らない街、眠りたい僕~19bitch)
5.リセットセット
6.たぶん、嘘だね。
7.月だけが聞いている
8.$ラリ無双
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